アスベスト対策改善の提言
アスベスト根絶ネットワーク


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【項目】

問題事例が頻発するアスベスト対策
吹きつけアスベストは公費で除去
依然として高いアスベスト濃度
次々に見つかるズサン工事
提言1 アスベスト調査員の新設
提言2 労基署はズサン業者に厳罰を
提言3 改修工事とアスベスト建材除去に公費支出を!
提言4 アスベスト建材不使用
提言5 被災地の教訓を全国に生かそう


問題事例が頻発するアスベスト対策

 震災後8カ月の間の広範な運動によって、被災地のアスベスト対策はようやく「無法時代」を脱し、吹きつけアスベストを除去してからビルを解体するのが当たり前になってきた。しかし実際にはザルで、問題事例が頻発している。成果と問題点を点検し、改善策を提言したい。

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吹きつけアスベストは公費で除去

 被災地のビル・家屋などの解体工事は、災害廃棄物処理の一環として国が97.5%、地方自治体が2.5%を負担して、公費で行なわれている(資本金1億円以上の大企業を除く)。当初、吹きつけアスベスト除去費は公費負担に含まれておらずズサン工事が横行していたが、4月頃から公費負担となり、ようやく対策が進められるようになった。
 神戸市は吹きつけアスベストを除去しないまま行なわれていたビル解体工事をストップし、5月1日付「震災に伴う家屋解体・撤去工事におけるアスベスト粉じん対策に係る基本方針」を発表し、ビル解体契約時の吹きつけアスベストの調査・報告の義務付け、市内40カ所以上でのアスベスト濃度測定、復興建築物におけるアスベストを含まない建材の普及促進などを打ち出している。
 兵庫県は4月のビル解体工事マニュアルで吹きつけアスベストの事前除去を明確に打ち出し、7月10日には吹きつけアスベスト除去現場に外部から分かる表示をするよう業者に通知している。7月20日には兵庫労基局、神戸市、兵庫県の共催により、業者を対象とするアスベスト講習会も開かれている。公立学校では夏休み前にアスベスト教育が行なわれ、マスク着用を指導している。

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依然として高いアスベスト濃度

 しかし8月に環境庁が発表した被災地の6月末のアスベスト濃度は、平均0.8本/l。4月からほとんど変わらず、東京の約10倍近い濃度が続き、アスベスト汚染が被災地全域に広がっている。一体これはなぜなのか?

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次々に見つかるズサン工事

 6月から8月中旬までに兵庫県内で32件の吹きつけアスベスト除去工事の届出があったが、私たちは6月以降も吹きつけアスベストを除去しないまま解体していた例を神戸市内だけで少なくとも4件発見している(写真1)。吹きつけアスベストは公費で除去できるのに、なぜ除去しないのか?

写真1
鉄骨に青石綿が吹き付けられたまま解体工事
(神戸市東灘区 06/30/95)

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提言1 アスベスト調査員の新設

 神戸市によると、ゼネコンの現場監督でも、吹きつけアスベストを見てもアスベストだと判別できないという。中小の解体業者はなおさらだ。問題の4件とも公費負担による解体工事で、神戸市が契約に関わっているが、解体業者は「吹きつけアスベストなし」と申告し、神戸市は調査していなかった。神戸市も労基署も人手不足なら、ボランティアなどを「アスベスト調査員」として活用し、解体前のアスベスト調査員による検査を義務付ける必要がある。

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提言2 労基署はズサン業者に厳罰を

 4件の解体工事はいずれも吹きつけアスベストを除去しないまま解体した労働安全衛生法違反工事だが、労基署はろくに調査もしていなかった。労働者にアスベストを吸い込ませた原因究明と再発防止策、厳正な措置を講ずるのが労基署の役割だ。

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提言3 改修工事とアスベスト建材除去に公費支出を!

 被災地では改修工事、新築工事が急増している。鉄骨造のビルが壊れても吹きつけられたアスベストを一部はがしたりして改修し、間に合わせることも多い。私たちはアスベストを吹きつけられたビルの改修工事を8件見ているが、アスベスト対策を講じたとされているのは1件だけ。労働者はアスベストを吸い込みながら働いている。改修工事は「災害廃棄物処理ではない」として公費が一切支出されておらず、被災したビル所有者はアスベスト対策費用を負担できないでいる。
 解体されるマンション、商業ビルなどにはピータイル、スレートなどアスベスト建材が使われている。4月からビル解体の際に義務付けられたアスベスト建材等の調査・記録も行なわれておらず、天井材・壁材などのアスベスト建材はハンマーで割られ、ピータイルはコンクリートと一緒に粉々に砕かれている。解体現場の労働者は、特に暑くなってからはほとんど防塵マスクをしておらず、大量のアスベスト繊維を吸い込んでいる。被災地のアスベスト濃度がなかなか下がらないのは、解体によるアスベスト建材からの飛散の影響が大きいと思われる。
 災害廃棄物(ガレキ)処理費を所管する厚生省は「アスベスト建材対策に公費を使ってはいけないとは言っていない。支出するかどうかは市町村の判断」と言っている。改修時のアスベスト対策、アスベスト建材除去費も公費負担すべきである。
 大林組神戸支店は、解体時のアスベスト建材調査・飛散防止対策も、新築時のアスベスト建材の飛散防止対策も実施していないと公言している。7月20日のアスベスト講習会資料もアスベスト建材からの飛散防止対策にはふれていない。労基署の責任は重大だ。

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提言4 アスベスト建材不使用

 和風瓦の産地淡路島に近いこともあって、倒壊した戸建て住宅の屋根にはコロニアルなどのスレート瓦はほとんど使われていなった。しかし震災後は「瓦が重かったので地震で倒れた」と誤った宣伝がなされ、アスベスト製の軽いスレート瓦が大量に使われ始めている(写真2)。神戸市はノンアス建材の普及促進を打ち出しているが、具体的な普及活動が必要である。

写真2
新築現場に山積みされたアスベスト建材
(神戸市灘区 08/14/95)

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提言5 被災地の教訓を全国に生かそう

 日本列島全体が地震の活動期に入っている。悲劇を繰り返さないために、日本全国で、助成措置による吹きつけアスベスト除去の促進、アスベスト調査員制度、アスベスト建材除去時の飛散防止対策の普及、防塵マスクの備蓄、アスベストを原則的に禁止するアスベスト規制法の制定が必要だ。

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(C) Aug. 1995, ASNET

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