マスクプロジェクト第2期 | ||
被災地のアスベスト対策を考えるネットワーク |
【項目】
逆風の中のマスクプロジェクト
各地域のボランティアグループが競うようにマスクを配り、大いに盛り上がった95年2月〜3月。それからボランティアたちが去り、マスクなんかしていられない暑い夏も過ぎて、避難所も閉鎖され、「復興」が基調になってきた9月、再び、マスクプロジェクトへの協力を呼びかけた。そのときの反応を一言で言うと、「やっても無駄」。アスベストは危険だなどといくら道理を説いても、今はもうアスベスト対策を考える気分じゃない、善意の押し売りはもういい、というのである。
確かに逆風が吹いていた。
神戸市教育委員会や日本赤十字社が提供した23万枚のマスクも、それぞれの学校の判断で配ったり配らなかったり。配る場合も、希望者だけで、マスク配布の本来目的である「啓発」が完全に抜け落ちていたり。さらにひどい場合には、せっかく配布したマスクが避難所閉鎖に伴って市に「返却」され、焼却処分になるという事例もあった。
マスクプロジェクトの方法論
しかし9月になっても、解体工事は続いていた。行政のアスベスト対策はだいぶ強化されたが、それは吹きつけアスベストの話で、含有建材はノーマーク。そのためか、大気中のアスベスト濃度はなかなか東京並みにならない。
こうした状況だからこそ、マスク配布を通じて、もう一度アスベストへの警戒感を呼び覚ます必要があった。
そのための戦略は2つ。ひとつは、子ども自身にどうしてマスクをしなければならないのかを認識させること。もうひとつは、日常的に子どもたちと関わっているおとながマスクを手渡し、着用を指導すること。
このためにボランティア仲間のアニメーターに協力してもらって、子ども用のパンフレットを作成した(右図)。また、地域でマスク配布するリーダーを募った。これには芦屋の歯科医・錦和彦さんが真っ先に名乗りを挙げてくださった。
一方、解体現場の集中している神戸市中央区内の小学校に配る作戦も立てた。
15校で6,162枚のマスクを配布
まず、教委との交渉。これは御影中学の件で交渉経験のある吉田直子さんに口火を切ってもらった。教委は予算がないから自身はマスクを配布できないが、被災地アスネットのマスク配布の話は各小学校に紹介すると約束した。おかげで、小学校へはスムーズに話が通った。
折よく、スリーエム ヘルスケア(株)が、これまでのものよりひとまわり小さい防じんマスクを新発売した。春先、マスクボランティアたちが、子ども用サイズのマスクの開発をメーカーに依頼していたのが、実を結んだのだ。さっそく、スリーエムと交渉し、安価で売ってもらうことになった。
また、活動を停止したボランティア団体「応援する市民の会」に残っていた防じんマスクを譲り受け、職員用として配り、その際、先生方からマスク着用を指導してくれるようお願いすることにした。
学校へのマスク配布は11月から12月にかけて行った。
マスクはどの学校でもおおむね、好意的に受け取ってもらえた。
とくに宮本小学校では、近くの解体予定の公営住宅で吹きつけアスベストが見つかったとの連絡を市から受けており、除去工事の期間は、集団登校とマスクの着用を指導すると、校長先生からお聞きした。
最終的に、6,162枚の子ども用マスクを配った。
なお、マスク購入費とパンフレットの制作費は、「阪神大震災マスク支援プロジェクト」へ寄せられたカンパを利用させていただいた。カンパ協力者に深謝する。
地 域 | 配付先 | 枚数 |
---|---|---|
芦屋市 | 錦歯科 | 50 |
神戸市東灘区 | 本山第2小学校 | 860 |
本庄小学校 | 910 | |
本山中学校 | 740 | |
神戸市中央区 | 宮本小学校 | 145 |
春日野小学校 | 230 | |
雲中小学校 | 540 | |
吾妻小学校 | 234 | |
小野柄小学校 | 115 | |
若菜小学校 | 122 | |
二宮小学校 | 164 | |
山の手小学校 | 550 | |
北野小学校 | 124 | |
神戸諏訪山小学校 | 463 | |
湊小学校 | 614 | |
湊川多聞小学校 | 301 | |
合 計 | 6162 |
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