アスベストによる2次災害を防ごう! | ||
アスベスト根絶ネットワーク |
【項目】
安全で慎重なアスベスト対策を
阪神大震災は不意打ちだった。被災された方々に心よりお見舞い申し上げ
ます。
都市の建物にはアスベストが大量に使われている。東京都の調査によると
、都内の民間ビルの約5割にアスベストが吹きつけられていた。地震時のア
スベスト飛散、倒壊・損壊したビルの解体・除去作業によるアスベスト飛散
をはじめ、被災地のアスベスト被ばくは大問題だ。復旧・復興は早い方がい
いが、急ぐあまり、ズサンになってはならない。
道路ばたにむき出しの吹きつけアスベスト
アスネットはさる2月6日、7日の両日、第1回の現地調査を行なった。 その結果は一口で言って「解体・ガレキ除去の安全対策はほとんど手つかず の状態である」と言っていい。
写真1
散水もせず、ほこりだらけ
(神戸市東灘区 02/18/95)
第1に、すでに始まっているビルの解体・除去工事では、アスベスト対策
はおろか、通常の粉じん防止対策も形ばかりで、実効がほとんどなく、「超
法規」の工事がまかり通っている。神戸市の中心街三宮でも「水道が復旧し
ていないため(?)」散水もほとんど行なわれず、もうもうたる粉じんが飛
散している(写真1)。労働省や環境庁が簡易防塵マスクを大量に送った
というが、解体現場の労働者は簡易防塵マスクもしないで働いていた。ビ
ルの解体が急ピッチで進む神戸のオフィス街では粉じんで先も見えないほど
に真っ白になり、サラリーマンなどがガーゼマスクやマフラーで口元を押さ
えながら小走りに走り抜ける姿が報道されている。
第2に、神戸市は震災前に公共建築物などの吹きつけアスベストを調査し 露出部分は封じ込め工事をしたというが、市庁舎旧館が損壊して立入禁止の ため、資料を取り出せないという。民間の建物については吹きつけアスベス トの調査もしていない。
写真2
倒壊した青石綿吹きつけマンション
(神戸市東灘区山光マンション 02/07/95)
第3に、倒壊・損壊した鉄骨構造の建物には、はっきりと分かる石綿や岩
綿の吹きつけがある。そんなところがたくさんある。
その中で、明らかにクロシドライト(青石綿)と分かる吹きつけがあるマ
ンションの倒壊現場に出くわした(写真2)。ガレキの上にもたくさんのク
ロシドライトの塊が散乱している。その脇を大勢の人たちが無防備のまま通
り抜けていく。アスベストがあることも知らされていない。
第4に、聞いてみると、住民もボランティアもアスベストの恐さは知って
いるが、どれがアスベストか見分けられず、無防備である。
石綿対策全国連絡会議が申し入れ
1月31日、石綿対策全国連絡会議は労働省に対し「兵庫県南部地震復旧 作業でのアスベスト飛散防止に関する要請」を行ない、解体前のアスベスト 調査、防塵マスクの着用、作業記録、飛散防止対策、廃棄物の移送・処理 時の飛散防止対策などを申し入れた。
当局のアスベスト・粉じん対策
1月31日、「朝日新聞」は「アスベスト飛散緊急調査」と、初めて被災
地のアスベスト問題を取り上げ、環境庁が2月6日から環境測定を開始する
ことを報じた。
労働省は同日、簡易防塵マスク2万枚の配布を始めたという。
厚生省も同日、阪神大震災の関係都道府県政令市に対し、災害廃棄物、特
に建築物の解体等に伴う廃棄物について、有害物質を含む廃棄物が混在して
いたり、そのおそれがある場合には、廃掃法に従って適正処理が確保される
よう、関係業界、市町村等への指導を求めている(2月8日「環境新聞」)。
こうした動きを受けて兵庫県は2月2日、環境庁と協議のうえ、解体工事
を発注する神戸市など10市8町に対しアスベスト対策を施すことを発注の
条件とするよう指導した(2月2日「日経新聞」夕刊)。同県土木部は建設
業者団体の長に対し、散水・シート、解体前のアスベスト除去などを求めて
いる。
しかし、これら当局の対応はほとんど実効をあげていない。神戸市の布施
畑環境センター(処分場)にはガレキと一緒にアスベストが持ち込まれてい
た(2月6日 フジテレビ)。宝塚市では、撤去した木材等の野焼きで煤塵
・有毒ガスがひどく、近くの団地自治会が要望書を提出している(2月8日
テレビ朝日)。
環境庁の測定も、遅きに失した感もないではないが、結構なことだ。しか
し街中における大気中の濃度測定結果のみに依拠して、被災地でのアスベス
ト汚染の度合いを結論づけることは危険だし、やめてほしい。地震や解体工
事に伴ってアスベストが飛散していることは間違いないし、アスベストには
安全な濃度はない。アスベストがそこにあることが、すでに危険なのだ。
アスネットに何ができるか
行政がアスベストの発見に手が廻らないというのであれば、私達は市民が
探索するのを援助することはできる。
さしあたって、倒壊した建物−特に鉄骨づくり−を調査し、アスベストと
思われる吹きつけ材がある場合、危険表示をし、行政に報告して立入禁止・
飛散防止措置を求めることが必要だ。
解体現場では、散水が行なわれ労働者が防塵マスクをつけているような
状況を作り出す必要がある。
震災の苦しみに続いて発がんの恐怖まで与えてはならない。アスネットで
は近く第2回の現地調査を予定している。被災地のアスベスト・粉じん問題
について皆さんの提案、協力申し出など、ぜひご連絡ください。
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